※自動車運送事業の特定技能外国人の受入れについては現時点で全てが決まっているわけではありません。変更点については随時修正していきます。またここでは自動車運送事業の中でもトラック事業について記載しております。
【特定技能外国人とは】
特定技能外国人とは簡単にいうと、在留資格「特定技能」を所持して日本で働く外国人のことです。日本にいる外国人は何かしらの在留資格(永住や技能実習など)を持っているのですが、その在留資格の一つが特定技能です。
この特定技能の最大の特徴は人手不足の即戦力として活用できる事です。
日本の在留資格制度は非常に複雑なのでここでは割愛しますが、簡単にいうと今まで一部の外国人にしか認められていなかった仕事ができるようになったということです。
そしてその一つが、自動車運送業における運転者などです。これにはトラックだけでなくタクシーやバスの運転者も該当します。
また特定技能は自動車運送業だけではなく他の人手不足の業界でも活用できます。例えば建設業や製造業、介護、農業などです。実際にこれらの業界ではすでに特定技能外国人の受入れは始まっております。
自動車運送業はこれらに遅れて2024年から加わるようなイメージです。
【人手不足数と特定技能外国人の受入れ見込み数】
自動車運送業で今後どれくらい人手不足になるか気になるところですが、今後5年間で合計28万8,000 人程度(トラック運送業:19万9,000 人程度、タクシー運送業:6万7,000 人程度、バス運送業:2万2,000 人程度)の人手不足が生じると推計されています。2024年問題も踏まえドライバー確保が直近の課題となっていますが、これらの解決策の一つとして特定技能外国人が挙げられます。特定技能外国人の受入見込み数は今後5年間で2万4,500人とされています。つまり人手不足数の内、約1/10を外国人で補おうとしているわけです。
これが多いか少ないかは議論の余地があるかと思います。
先ほど日本の在留資格制度は非常に複雑だと記載しましたが、その一つに日本の行政はまずは日本人の仕事が確保できる事を大前提としており、外国人が日本で働くためにはある程度の要件(学歴,職務経歴、金銭など)を求めてきました。
要は外国人に日本人の仕事を取られないようにしてきたのですが、その結果インフラ系の肉体労働などの業種で圧倒的な人手不足が生じることになりました。
そこで行政もようやく新しい在留資格、特定技能を創設することで外国人に求める要件を緩和するに至ったのですが、この1/10という数字を見てもやはり行政の慎重な姿勢が伺えるかと思います。
一方で外国人が日本の運送業界で本当にやっていけるのかという疑問もあります。
私も取引先の運送事業者の方に聞いているのですが、ほとんどの方はそんな簡単じゃないよとおっしゃいます。
特にお客との会話やコミュニケーションが必要な業種などは外国人に不向きな面もあるかと思います。そのため自分の会社で特定技能外国人を活かせるかどうか慎重に判断する必要があると思います。
とはいっても、日本人の運転者がそもそも採用できない現実もあり、考えを改めないと時代に取り残される可能性もあります。まさに運送事業者にとって特定技能外国人を活用するかどうかの決断は将来を左右するといっても過言ではないでしょう。
【特定技能外国人を受け入れるための要件】
また一大決心して特定技能外国人を受け入れようと決断しても、特定技能外国人の受入れは簡単ではありません。
特定技能所属機関(特定技能外国人を受入れる会社)の主な要件は下記のとおりとなります。
特に3番目の要件は中小事業者にはハードルが高いといえます。全国貨物自動車運送適正化事業実施機関が認定する安全性優良事業所とはトラック協会のGマークのことです。これを取得していなければならないとされています。このGマークを取るための条件は他の記事で説明しようと思いますが、その一つに運輸開始から3年経過していることが挙げられます。
ということはGマークで要件を満たそうとする場合は3年以上運送業を営んでいないと特定技能外国人は受け入れられないということになります。今年に入って関東運輸局の法令試験の合格率も低いですし、これから新規で運送業界に参入してくいる事業者にとっては色々な条件面で苦労しそうです。
またこれは直接的な要件ではありませんが、特定技能外国人を受け入れてもその外国人が第一種運転免許を取得するまでの間は当たり前ですが運転者として従事させることはできません。
その措置としてトラック運送業については運転免許を取得するまでの間は在留資格「特定活動」を6か月付与して、外国人を在留させるようにしているのですが、この間のその外国人の仕事の例として「受入れ機関における車両の清掃といった関連作業に従事することを認める。」とされています。
この関連作業がどこまでの範囲かは現時点では不明ですが、仮にこの期間に賃金を支払って、本当に車両の清掃業務にしか外国人に従事させられないのであれば、相当体力がある会社でないと雇用できないかと思います。
その他にも運転免許を取得するための費用や外国人の渡航費、後述する登録支援機関に1号特定技能外国人支援計画を委託する支援費、行政書士などに委任する地方出入国在留管理局(入管)に在留資格変更許可申請を行う費用など、想定される費用はあげればきりがないです。
- 国土交通省が設置する「自動車運送業分野特定技能協議会」(以下「協議会」という。)の構成員になること。
- 自動車運送事業を経営する者であること
- 一般財団法人日本海事協会が実施する運転者職場環境良好度認証制度に基づく認証を受けた又は全国貨物自動車運送適正化事業実施機関が認定する安全性優良事業所を有する者であること
【特定技能外国人の要件】
次に特定技能外国人の要件です。
自動車運送業分野特定技能1号評価試験とは「運行管理者等の指導・監督の下、貨物自動車運送事業における運行前後の点検、安全な運行、乗務記録の作成や荷崩れを起こさない貨物の積付け等ができるレベルであることを確認するもの」とされています。
試験はまだ開催されていないので詳細は分かりませんが、他の特定技能(建設や製造など)の試験をみると一般的な範囲で勉強すれば外国人でも合格できるレベルです。というか合格できないといつまでも人手不足を解消できないのでそれなりの試験に落ち着くはずです。
日本語能力水準N4も同様です。N4は小学校中~高学年レベルとされています。
他の在留資格ではN2レベルを要求されることがある事を考慮すると簡単だといえます。
問題は「第一種運転免許を取得すること」です。日本の免許を外国人が取得するのはかなりハードルが高いといえます。
先日某番組で仮免に何回も落ちている女性の特集がありましたが、運転免許試験は日本人でも落ちます。
また安全面から試験の難易度を下げることができないので、この運転免許試験にN4レベルの外国人を相当数どのように合格させるのかはっきりいって未知数です。これは他の特定技能にはない要件なので運送業特有のものといえます。
※ただし、免許は外免切替はOKです。外免切替の問題は最近ニュースになっていたので情報源を添付します。
https://news.yahoo.co.jp/articles/3a5ba48cc3bc5456bbb38fac30df76a4535df0c8
- 自動車運送業分野特定技能1号評価試験の合格すること
- 第一種運転免許を取得すること
- 日本語能力水準N4以上に合格すること
【特定技能外国人の雇用までの流れ】
- (外国人が)試験(自動車運送業分野特定技能1号評価試験や日本語能力水準N4以上)に合格する
- 雇用契約の締結
- 1号特定技能外国人支援計画の策定(特定技能1号のみ)
※1号特定技能外国人支援計画の作成とは
https://www.moj.go.jp/isa/policies/ssw/supportssw.html - 在留資格変更許可(外国人を海外から呼び寄せる場合は在留資格認定証明書交付申請)
- 就労開始
【特定技能外国人の雇用は行政書士に依頼しよう】
以上、特定技能外国人の受入れまでについて記載しました。
運送業は建設業などと違い技能実習制度の対象職種ではないので初めて在留資格や地方出入国在留管理局(入管)という言葉を聞いた方もいるかもしれません。
おさらいですが特定技能外国人の受け入は下記のような手続きを行う必要があります。
- 協議会の構成員になること
- 自動車運送事業を経営する者であること
- Gマークを取得すること
- 1号特定技能外国人支援計画の策定及びその外国人の支援をすること
- 在留資格変更許可(在留資格認定証明書交付申請)
これらの手続きは全て当事務所でできると考えています。
例えば、協議会の構成員になること、というのもただ構成員になるだけではなく、建設業の特定技能などは国交省への受入計画認定申請というものをしなければなりません。自動車運送業ではどうなるかは分かりませんが、当事務所では建設業や製造業などの特定技能手続きを通して特定技能の全体像を把握しておりますので、このような新しい手続きが発生したとしても迅速な対応をとるができると考えております。
当事務所は創業10年以上入管への在留資格各種申請手続きを行っております。
今までは運送事業者様の運輸局関係の手続きを多くやってきましたが、今後は入管関係のお手伝いもできるかと思います。
運送業の手続きと入管の手続きのそれぞれに精通した行政書士は中々いないと思うので、特定技能外国人の受けれでお困りの方は当事務所までお気軽にご相談ください。