整備管理者の主な業務はなんといっても自動車の点検です。
運行管理者の記事で一般貨物事業は国民の生命や財産を預かる重大な責任も担っていると記載しましたが、車両の点検を怠るとそれこそ大事故につながる恐れがあるため、安全な運行管理体制を築くことはできません。そのため整備管理者は日々自動車の点検をして必要があれば事業者や運転者等に意見又は指示などをしなければなりません。
一般貨物の許可と整備管理者の関係
整備管理体制についての記事でも記載しましたが、一般貨物事業者は選任が義務づけられている員数の常勤の整備管理者を確保しなければなりません。一般貨物自動車運送事業では5台から選任義務があります。整備管理者は整備管理体制に支障をきたさなければ、原則1人以上いればよく、運行管理者と違い車両数などにより人数の増減が規定されていません。
また運行管理者と同じく一般貨物の新規許可申請では申請前に整備管理者を確保していなくても申請は可能です。しかし、社内に整備管理者の資格を有する者がいないのであれば早めに募集をかけたほうがいいでしょう。
というのも、整備管理者の資格を有する者の応募はそこまで多くは期待できないからです。なので、1日でも早く運送事業を開始したいのであれば早急に整備管理者の確保に動いたほうが賢明といえます。
整備管理者についての関係法令
一般貨物自動車運送事業者は事業用自動車の定期的な点検及び整備その他事業用自動車の安全性を確保するために必要な基準を遵守しなければなりません。
また、事業用自動車を保管することができる自動車車庫の整備及び管理に関する基準も遵守しなければなりません。
一般貨物自動車運送事業者は、次に掲げる事項に関し国土交通省令で定める基準を遵守しなければならない。
二 事業用自動車の定期的な点検及び整備その他事業用自動車の安全性を確保するために必要な事項
貨物自動車運送事業法 第17条
一般貨物自動車運送事業者は、次に掲げる事項に関し国土交通省令で定める基準を遵守しなければならない。
一 事業用自動車を保管することができる自動車車庫の整備及び管理に関する事項
貨物自動車運送事業法 第24条の4
そこで一般貨物自動車運送事業者(自動車の使用者)は自動車の点検及び整備と車庫の管理に関する事項を処理させるため、必要な専門的知識を持っている者のうちから、整備管理者を選任しなければなりません。
自動車の使用者は、自動車の点検及び整備並びに自動車車庫の管理に関する事項を処理させるため、自動車の点検及び整備に関し特に専門的知識を必要とすると認められる車両総重量八トン以上の自動車その他の国土交通省令で定める自動車であつて国土交通省令で定める台数以上のものの使用の本拠ごとに、自動車の点検及び整備に関する実務の経験その他について国土交通省令で定める一定の要件を備える者のうちから、整備管理者を選任しなければならない。
道路運送車両法 第50条第1項
車両数によって必要な整備管理者数
要件を備える整備管理者の選任は車両総重量8トン以上の自動車、又は下記の要件に該当する車両を使用している場合に必要です。下記の要件でいうと、一般貨物事業者の場合は車両が5台以上ある場合に整備管理者の選任が必要になります。
乗車定員十一人以上の自動車(次号に掲げる自動車を除く。) | 一両 |
乗車定員十一人以上二十九人以下の自家用自動車(道路運送法(昭和二十六年法律第百八十三号)第八十条第一項の許可に係るものを除く。) | 二両 |
乗車定員十人以下で車両総重量八トン以上の自家用自動車及び乗車定員十人以下の自動車運送事業の用に供する自動車 | 五両 |
貨物軽自動車運送事業の用に供する自動車及び乗車定員十人以下で車両総重量八トン未満の自家用自動車であつて、第二号の許可に係るもの | 十両 |
整備管理者の資格要件
整備管理者になるためには点検及び整備に関する実務経験を2年以上し、かつ地方運輸局長が行う研修を受講するか、又は1級自動車整備士など対象となる資格を所持しているかなどの要件をクリアする必要があります。
法第五十条第一項の自動車の点検及び整備に関する実務経験その他について国土交通省令で定める一定の要件は、次の各号のいずれかに該当し、かつ、法第五十三条に規定する命令により解任され、解任の日から二年(前条第一号又は第二号の規定の適用を受けて選任される整備管理者にあつては、五年)を経過しない者でないこととする。
一 整備の管理を行おうとする自動車と同種類の自動車の点検若しくは整備又は整備の管理に関して二年以上実務の経験を有し、地方運輸局長が行う研修を修了した者であること。
二 自動車整備士技能検定規則(昭和二十六年運輸省令第七十一号)の規定による一級、二級又は三級の自動車整備士技能検定に合格した者であること。
三 前二号に掲げる技能と同等の技能として国土交通大臣が告示で定める基準以上の技能を有すること。
道路運送車両法施行規則 第31条の4
(a) 整備の管理を行おうとする自動車と同種類の自動車の点検若しくは整備又は整備の管理に関して二年以上実務の経験を有し、地方運輸局長が行う研修を修了した者であること
A「点検若しくは整備に関する実務経験」とは、次のものをいいます。
(1) 整備工場、特定給油所等における整備要員として点検・整備業務を行った経験(工員として実際に手を下して作業を行った経験の他に技術上の指導監督的な業務の経験も含む。)
(2) 自動車運送事業者の整備実施担当者として点検・整備業務を行った経験B「整備の管理に関する実務経験」とは、次のものをいいます。
(1) 整備管理者の経験
(2) 整備管理者の補助者として車両管理業務を行った経験(平成19年7月9日付け自動車交通局長通達改正以前の代務者としての経験を含む。)
(3) 整備責任者として車両管理業務を行った経験C「整備の管理を行おうとする自動車と同種類の自動車」とは、次の種類の自動車をいいます。
(1) 二輪自動車以外の自動車
(2) 二輪自動車D「地方運輸局長が行う研修」とは、「選任前研修」のことであり、整備管理者になろうとする者は、車両法等の法令の基礎的な知識を有していることが必須であることから研修を実施し、これらの知識や能力を具備してもらうことを目的としています。
北陸信越運輸局
「選任前研修」を修了した者には、選任前研修修了証明書を交付します。整備管理者の選任届出時に選任前研修修了証明書の写しを添付することにより、地方運輸局長が行う研修を修了していることの証明となります。
A 「点検若しくは整備に関する実務経験」
整備工場とは認証整備工場などのことを指します。認証整備工場とは主に車検手続きを扱っている工場などを指します。そのため、単に車両の売買などを手掛ける自動車販売所はここでいう整備工場に該当しない可能性があります。
自動車運送事業者の整備実施担当者とは一般貨物の許可業者で整備実施担当者として働いていた経験のことを指します。なので一般貨物の許可業者でない事業者はここでいう自動車運送事業者に該当しない可能性があります。
B「整備の管理に関する実務経験」
整備管理者の経験が必要になります。ここでいう経験は一般貨物の許可業者に限定されない点がAの(2)と異なります。
C「整備の管理を行おうとする自動車と同種類の自動車」
二輪自動車以外の自動車か二輪自動車で区別されます。一般貨物の整備管理者としての実務経験に関しては二輪自動車の整備経験などは原則該当しないと考えられています。次の自動車整備士技能検定との違いに注意しましょう。
D「地方運輸局長が行う研修」
実務経験で整備管理者になるためには選任前研修の受講が必要になります。研修は日時が決められておりますので1日でも早く運送事業を開始したいのであれば早めの受講を心がけましょう。
(b) 自動車整備士技能検定に合格した者であること
自動車整備士技能検定に合格した者とは下記のような資格を持った者が該当します。基本的には1~3級などの階級やガソリン、ジーゼル、シャシなどの種類は関係なく整備管理者になれます。
※二輪自動車整備士が一般貨物の整備管理者の要件としてふさわしいかどうか疑義があるようですが、当事務所が本執筆時に確認した時は二輪自動車整備士でも一般貨物の整備管理者としての要件を満たすという回答でした。最終的には各自ご確認ください。
・一級大型自動車整備士
・一級小型自動車整備士
・一級二輪自動車整備士
・二級ガソリン自動車整備士
・二級ジーゼル自動車整備士
・二級自動車シャシ整備士
・二級二輪自動車整備士
・三級自動車シャシ整備士
・三級自動車ガソリン・エンジン整備士
・三級自動車ジーゼル・エンジン整備士
・三級二輪自動車整備士
整備管理者の業務
最後に整備管理者の業務についてみてみましょう。
道路運送車両法施行規則では整備管理者の業務というよりは、道路運送車両法第50条第2項で自動車の使用者から整備管理者に与えられた権限という立ち位置のようです。
・日常点検の実施方法を定める事
・日常点検の結果に基づき、運行の可否を決定すること
・定期点検を実施すること
・日常点検・定期点検のほか、随時必要な点検を実施すること
・日常点検・定期点検・随時必要な点検の結果、必要な整備を実施すること
・定期点検及び整備の実施計画を定めること
・点検整備記録簿その他の点検及び整備に関する記録簿を管理すること
・車庫を管理すること
・これらの事項を処理するため、運転者、整備員その他の者を指導し、または監督すること
道路運送車両法施行規則 第32条