一般貨物の許可と運行管理者の関係

一般貨物事業は日本のインフラに欠かせない事業であり、これら物流の力によって有難いことに我々国民は必要な商品やサービスのニーズを満たすことができております。

しかし、その一方で一般貨物事業は国民の生命や財産を預かる重大な責任も担っており、万が一重大な交通事故を引き起こせば事業者の事業の継続が困難になってしまうなどのリスクも抱えているのが現状です。

そのため、運行の安全を確保するために、一般貨物事業者はしっかりした運行管理体制を構築する必要があります。具体的には一般貨物事業者には運行管理者試験に合格した者などを運行管理者として配置することが義務付けられています。

一般貨物の許可と運行管理者との関係

一般貨物の新規許可申請においては事前に運行管理者を確保できていなくても申請自体は可能です。ただし、運行管理者はその営業所への常勤性が必要になるため、社内に運行管理者の資格を有する者がいないのであれば早めに募集をかけたほうがいいでしょう。
というのも、運行管理者の資格を有する者の応募はそこまで多くは期待できないからです。なので、1日でも早く運送事業を開始したいのであれば早急に運行管理者の確保に動いたほうが賢明といえます。

運行管理者は他社はもちろんのこと、社内の他の営業所の運行管理者や運行管理補助者と兼務することはできません。逆に運行管理者が複数選任されている営業所では、運行管理者の中から業務を統括する統括運行管理者を選任する必要があります。

また、運行管理者が1人しか選任されていない場合、問題となるのが運行管理者が不在の場合です。そのような状況では点呼をとる者がいないので運行管理体制に支障をきたします。同様に運行管理者の出社前や退社後に点呼を取らなければならない事情が生じた場合も問題となります。

それではこのような状況を防止するにはどのようにすればいいのでしょうか。

それは運行管理者の補助者を選任することです。

補助者として選任されるためには運行管理者資格者証を持っているか、国土交通大臣の講習を受講している必要があります。以外にもこの補助者の選任については届出義務がないので、事業者に自由な裁量が認められているといえます。

一般貨物自動車運送事業者等は、運行管理者資格者証を有する者又は国土交通大臣が告示で定める運行の管理に関する講習であって国土交通大臣の認定を受けたものを修了した者のうちから、運行管理者の業務を補助させるための者(以下「補助者」という。)を選任することができる。

貨物自動車運送事業輸送安全規則 第18条第3項

営業所に必要な運行管理者数

運行管理体制についてのところでも記載しましたが、一部の事業者を除き一般貨物事業者は選任が義務づけられる員数の常勤の運行管理者を確保しなければなりません。
一部の事業者とは5両未満の事業用自動車の運行を管理する営業所であって、地方運輸局長が当該事業用自動車の種別、地理的条件その他の事情を勘案して当該事業用自動車の運行の安全の確保に支障を生ずるおそれがないと認めるものなどです。

事業用自動車の両数(被けん引車を除く)運行管理者数
29両まで1人
30両~59両2人
60両~89両3人
90両~119両4人
120両~149両5人
150両~179両6人
180両~209両7人
210両~239両8人
事業用自動車と運行管理者数

運行管理者の資格要件

運行管理者になるためには運行管理者資格者証の交付を受けなければなりません。
運行管理者資格者証を交付されるためには次の(a)又は(b)のどちらかの要件を満たさなければなりません。

(a)運行管理者試験に合格した者

(運行管理者試験の受験資格)
・事業用自動車の運行の管理に関し一年以上の実務の経験を有する者
・国土交通大臣が告示で定める講習であって国土交通大臣の認定を受けたものを修了すること

(b) 事業用自動車の運行の安全の確保に関する業務について国土交通省令で定める一定の実務の経験その他の要件を備える者

(国土交通省令で定める一定の実務経験とは)
・一般貨物自動車運送事業者等の運行の管理に関し五年以上の実務の経験を有し、その間に国土交通大臣が告示で定める講習であって国土交通大臣の認定を受けたものを五回以上受講した者であること

よって、運行管理者になるためには、(a)運行管理者試験に合格するか(b)5年以上の実務経験及び講習の受講のどちらかが必要になります。

運行管理者等の義務

くどいようですが、一般貨物自動車運送事業では運行管理体制の構築が重要であり、その要となるのが運行管理者になります。そのため、事業者は運行管理者に対して業務を行うための一定の権限を与えなければならず、運行管理者からの助言を尊重しなければならないと法に記載されております。

また、一般貨物自動車運送事業者等は運行管理者の職務や権限を運行管理規定で定めなければなりません。このことからも運行管理者が他の従業員とは違う重要な立場であることが伺うことができます。

運行管理者は、誠実にその業務を行わなければならない。

一般貨物自動車運送事業者は、運行管理者に対し、業務を行うため必要な権限を与えなければならず、運行管理者がその業務として行う助言を尊重しなければならず、事業用自動車の運転者その他の従業員は、運行管理者がその業務として行う指導に従わなければならない。

貨物自動車運送事業法 第22条

運行管理者の主な業務

それでは次に運行管理者の業務についてみてみましょう。運行管理者の業務は多岐にわたります。運行管理者の業務は法令試験でもよく出題されているのでチェックしておきましょう。運行管理者が行う業務は、貨物自動車運送事業輸送安全規則にて、次のように定められています。

・一般貨物自動車運送事業者等により運転者として選任された者以外に事業用自動車を運転させないこと

・乗務員が休憩又は睡眠のために利用できる施設を適切に管理すること

・勤務時間及び乗務時間の範囲内で乗務割を作成し、これに従って運転者を乗務させること

・酒気を帯びた状態にある乗務員を乗務させないこと

・乗務員の健康状態(1 年ごとに1 回、深夜業務の者は6 ヶ月ごとに1 回の健康診断を実施)を把握し、疾病、疲労、その他の理由により安全な運転をし、又はその補助をすることができないおそれがある乗務員を乗務させないこと

・長距離運転又は夜間に運転する場合で、疲労等により安全な運転を継続することができないおそれがあるときは、あらかじめ交替運転者を配置すること

・従業員に対し過積載運送の防止についての指導や監督を行うこと

・従業員に対し貨物の積載方法(偏荷重が生じないように積載すること。運搬中に荷崩れ等による落下防止のためのロープやシート掛けを行うなど)について、指導や監督を行うこと

・運転者に対し通行の禁止又は制限等違反の防止についての指導や監督を行うこと

・運転者に対して、点呼を行い、報告を求め、確認を行い、指示を与え、記録し及びその記録を保存し、並びにアルコール検知器を常時有効に保持すること

・運転者ごとに乗務記録を記録させ、その記録を1 年間保存すること

・運行記録計を管理し、その記録を1 年間保存すること

・運行記録計故障車は運行させないこと

・事故が発生した場合、事故の概要を記録し、その記録を3 年間保存すること

・運行指示書を作成し、適切な指示を行い、運転者に携行させ、その記録を1年間保存すること

・運転者ごとに写真を貼り付けた運転者台帳を作成し、営業所に備え置くこと

・乗務員に対し、指導及び監督を行い、その記録を営業所に3 年間保存すること

・特定の運転者に対する特別な指導を行い、その運転者に対して適性診断を受診させること

・異常気象時において、乗務員に対する適切な指示及び輸送の安全確保のための必要な措置をとること

・事業者により選任された補助者に対して指導及び監督を行うこと

・自動車事故報告規則第5 条の事故防止対策に基づき、運行の安全確保に関して、従業員に対し指導や監督を行うこと(特別積合せ貨物運送を行う場合は、乗務基準を作成し、基準の遵守について乗務員に対し指導や監督を行うこと)

・事業者に対し、事業用自動車の運行の安全の確保に関し必要な事項について助言を行うこと

・運行管理者の業務を統括すること(統括運行管理)

貨物自動車運送事業輸送安全規則 第20条

運行管理者の講習

ご覧いただいたとおり運行管理者の業務は多岐に渡ります。

しかし、いくら運行管理者試験に合格したとしても、これらの業務を新人の運行管理者が行うことはかなりハードルが高いといえるでしょう。

そこで初めて運行管理者に選任された者は必要な講習の受講が義務付けられております。また新人だけではなく既存の運行管理者も定期的に講習を受講しなければなりません。

一般貨物自動車運送事業者等は、国土交通大臣が告示で定めるところにより、次に掲げる運行管理者に国土交通大臣が告示で定める講習であって次項において準用する第十二条の二及び第十二条の三の規定により国土交通大臣の認定を受けたものを受けさせなければならない。

一 死者若しくは重傷者(自動車損害賠償保障法施行令第五条第二号又は第三号に掲げる傷害を受けた者をいう。)が生じた事故を引き起こした事業用自動車の運行を管理する営業所又は法第三十三条(法第三十五条第六項において準用する場合を含む。)の規定による処分(輸送の安全に係るものに限る。)の原因となった違反行為が行われた営業所において選任している者

二 運行管理者として新たに選任した者

三 最後に国土交通大臣が認定する講習を受講した日の属する年度の翌年度の末日を経過した者

貨物自動車運送事業輸送安全規則 第23条第1項

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