車庫の前面道路が私道だった時の対処法

一般貨物の新規許可を申請するには車庫の要件をクリアしなければなりません。

車庫の要件については「一般貨物の車庫の要件とは」を是非ご覧ください。そしてこの要件の一つに、前面道路が私道だった時の記述があるのですが、この記事では前面道路が私道だった時の対処法について解説します。

車庫の前面道路が私道だった時の審査基準

【新規許可等の審査基準】
(6) 事業用自動車が車庫への出入りに支障のないものであり、前面道路との関係において車両制限令(昭和36年政令第265号)に抵触しないものであること。 なお、前面道路が私道の場合にあっては、当該私道の通行に係る使用権原を有する者の承認があり、かつ、事業用自動車が当該私道に接続する公道との関係において車両制限令に抵触しないものであること。

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まず、車庫の要件を考えるうえで車庫の前面道路の幅が車両制限法に抵触していないかを調査する必要があります。この調査は一般的には道路を管轄している道路管理者に幅員証明書などの書類を請求して判断するのが原則となります。

しかし、道路の多くは市町村などの役所が管理しているため、その道路については幅員証明書を請求することができるのですが、稀に道路が国や自治体の所有ではなく、会社や個人が所有している場合があります。

このような道路を私道といいます。この道路のやっかいなところは外見上は普通の道路なので見た目だけでは判別ができない点です。

もし、前面道路が私道の場合は役所の管轄外となるため幅員証明書というものはありません。そのため原則とは違うアプローチをとる必要があります。

前面道路が私道だと知っている場合

まず、車庫の前面道路が私道だと分かっているときは、その私道の持ち主に対して「ここの道路を一般貨物の車両が通行してもいいですか?」とお伺いをたてなければなりません。このお伺いは最終的には通行承諾書という紙で承諾をとるのですが、最初は口頭で確認する程度でいいと思います。

この時点で私道の所有者に難色を示されたら他の場所を検討したほうがいいでしょう。

というのも、私道の所有者からすれば、他人に「あなたが持っている土地を通行させてくれ」といわれているようなものなので、警戒するのが当たり前だからです。

なので、通行を承諾してくれるケースというのは下記のような状況に限定されてくるかと思います。

  • 私道の所有者と旧知の仲であること
  • 車庫と私道の所有者が同一であること

最初のケースは元々知り合いだということです。私道の所有者が当初からあなたが運送業をやっていることを知っていたり、事前に相談を受けていたりすれば、承諾する可能性もあるかと思います。

ただし、この状況でも注意しなければならない点は通行を承諾しても私道の所有者には何もメリットがないという点です。

なので、深夜の通行は行わないとか、騒音に注意するとか、なるべく私道の所有者が心配にならないような説明ができるように心掛けておくべきです。

そして、もう一つ注意しなければならないのは、人間は口頭では了承しても、紙で契約するとなると抵抗を覚えるという点です。

法律上は口頭でも契約は成立するのですが、商習慣では紙で契約するのがまだまだ一般的です。そのため紙で契約や承諾をするとなると不安を覚える方が一定数でてきます。

余談ですが、当事務所のお客様にも「営業所は荷主さんの建物の一部を貸りているので問題ありません」とか「車庫は〇〇さんが自由に使っていいよと言っているから大丈夫です」という方がいらっしゃいますが、このように第三者の好意を前提で借り受けている状況で、いざ書面での契約を持ちかけると、断られるケースは珍しくありません。

よって、交渉前に書面での承諾書が必要になる点や承諾書は所有者側に何もデメリットを生じさせない理由や根拠などを説明して、所有者側が不安にならないよう十分配慮したほうがいいでしょう。

次のケースは車庫と私道が同じ所有者の場合です。このケースはかなり高い確率で承諾がとれるといっていいでしょう。なぜなら、所有者からみればあなたが車庫を借りれば賃料が入ってくるというメリットがあるので、必然的にあなたに協力しようと考えるからです。

通行承諾書の作成

所有者に通行の確認をとったら次は通行承諾書などの書類を作成しなければなりません。この書類は先ほど提示しているようにシンプルな内容ですが、問題は正確な場所を特定できるかどうかです。

所有者の多くは建物や土地の住所は把握していても私道の住所までは把握していないことがあるからです。なので、一般的には申請者側が私道の住所を調べて、通行承諾書に住所を記載し、それを所有者に持って行って、サインなり印鑑なりで承諾を取るという流れになります。

もちろん、住所は正確に特定しなければなりません。

そのため申請者には登記簿や公図などを読み解く力が求められます。
調査の段階で私道の一部に他の所有者が混ざっていると事態はさらに複雑化します。

また、道路が私道かどうかは最初から判明してはなく、調査していく段階で分かることがあります。市町村などの役所に幅員証明書を申請していく段階で、どこにも所管がないため判明するパターンです。このパターンだと私道の所有者との因果関係がないことが多いため上述した理由で他の車庫を探した方が賢明かもしれません。

結局最後は幅員証明書を取る

最後に幅員証明書を取ります。この幅員証明書は私道に接続する公道のものになります。
ここでの注意点はどの場所の幅員をとったかを分かるようにしてもらうことです。前面道路の幅員の場合は車庫の住所を記せばその前の幅員を記載してくれますが、今回のケースだと車庫と幅員を取りたい公道が離れているので、車庫の住所を記載しただけではどの部分の幅員をとっているか判断がつかない場合があります。

そのため、申請者の方から事情を説明して私道に接続する部分の公道の幅員が欲しいと説明したほうがいいでしょう。できれば車庫と私道と公道が記載されている地図などを添付して場所を特定するようにしましょう。

以上、前面道路が私道だったときの対処法について解説しました。

他にも一般貨物の要件調査では単にネットで調べるだけではなく、所有者や役所などとの説明・交渉などが必要になることが多くあります。

そしてこれら説明や交渉ができるためには審査基準をよく理解しておく必要があります。
見当違いや表面的な解釈では不利益が生じる可能性があるので調査は慎重に行うように心がけてください。

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