一般貨物自動車運送事業の許可を取っても事業者のやることはそれで終わりではありません。今回は営業所などに掲示しなければならない事項について解説します。
運送約款について
一般貨物自動車運送事業者は運送約款を定め、国土交通大臣の認可を受けなければなりません。しかし、標準運送約款と同一の運送約款を定めた場合は認可を受けたとみなされます。
運送約款とは運送事業を行ううえで必要な事項を定めたものとなります。
いわば、運送条件の取り決めみたいなもので、運送約款にはどのような設定や条件で荷物を運送するかが記載されています。
この運送約款は営業所などに掲示義務があるため、荷主などは事業者の運送約款を見ることで、運送における設定や条件を確認することができます。
また、運送約款は自由に設定することができます。よって、事業者は自社にふさわしい内容の約款を定めることもできます。
しかし、その場合は国土交通大臣の認可を受けなければならないので、ほとんどの事業者は国土交通大臣の標準運送約款を活用します。
標準運送約款は基本的な内容があらかじめ定められているので、一から約款を作成する手間が省けます。また国土交通大臣の認可をとる必要もありません。
一般貨物の新規許可申請の際は様式1-1の「① 運輸省告示第575号(平成2年11月22日)による標準貨物自動車運送約款を適用する」にチェックをいれるだけなので非常に簡単です。
一般貨物自動車運送事業者は、運送約款を定め、国土交通大臣の認可を受けなければならない。これを変更しようとするときも、同様とする。
2 国土交通大臣は、前項の認可をしようとするときは、次に掲げる基準によって、これをしなければならない。
貨物自動車運送事業法 第10条
一 荷主の正当な利益を害するおそれがないものであること。
二 少なくとも運賃及び料金の収受並びに一般貨物自動車運送事業者の責任に関する事項が明確に定められているものであること。
三 前号の運賃及び料金の収受に関する事項については、国土交通省令で定める特別の事情がある場合を除き、運送の役務の対価としての運賃と運送の役務以外の役務又は特別に生ずる費用に係る料金とを区分して収受する旨が明確に定められているものであること。
3 国土交通大臣が標準運送約款を定めて公示した場合(これを変更して公示した場合を含む。)において、一般貨物自動車運送事業者が、標準運送約款と同一の運送約款を定め、又は現に定めている運送約款を標準運送約款と同一のものに変更したときは、その運送約款については、第一項の規定による認可を受けたものとみなす。
運送約款の記載事項
運送約款には次の事項を記載しなければなりません。
特に運賃及び料金の収受又は払戻しに関する事項については法律でも「運賃及び料金の収受並びに一般貨物自動車運送事業者の責任に関する事項が明確に定められているものであること」と記載されていますので、どのような条件で収受又は払戻しがあるか明確に定めなければなりません。
一 特別積合せ貨物運送をするかどうかの別
貨物自動車運送事業法施行規則 第11条
二 貨物自動車利用運送を行うかどうかの別
三 運賃及び料金の収受又は払戻しに関する事項
四 運送の引受けに関する事項
五 積込み及び取卸しに関する事項
六 受取、引渡し及び保管に関する事項
七 損害賠償その他責任に関する事項
八 その他運送約款の内容として必要な事項
運送約款の掲示義務
次に運送約款は主たる事務所その他の営業所において公衆に見やすいように掲示しなければならないという掲示義務があります。同じく運賃及び料金表なども掲示義務があります。
法第十一条の規定により掲示しなければならない事項は、次のとおりとする。
貨物自動車運送事業法施行規則 第13条
一 運賃及び料金(個人(事業として又は事業のために運送契約の当事者となる場合におけるものを除く。)を対象とするものに限る。)
二 運送約款
三 運行系統
四 法第七条第四項の規定により一般貨物自動車運送事業の許可に付された事業の範囲の限定
五 業務の範囲(法第五十九条第一項の規定により付された条件によって業務の範囲が限定されている場合に限る。)
安全管理規程について
一般貨物自動車運送事業者は安全管理規定を定めた時は国土交通大臣に届出しなければなりません。安全管理規定の届出義務があるのは事業用自動車の数が200両以上ある事業者になります。これらの事業者は事業規模がそれなりにあると判断できるので、より一層の輸送の安全の確保を求めていることが伺えます。
一般貨物自動車運送事業者(その事業の規模が国土交通省令で定める規模未満であるものを除く。以下この条において同じ。)は、安全管理規程を定め、国土交通省令で定めるところにより、国土交通大臣に届け出なければならない。これを変更しようとするときも、同様とする。
貨物自動車運送事業法 第16条第1項
この安全管理規程等には安全統括管理者の選任義務が記載されています。この安全統括管理者の選任義務も事業用自動車の数が200両以上ある事業者になります。よって車両数が200両未満の事業者には安全統括管理者の選任は努力義務になっております。
一般貨物自動車運送事業者は、安全統括管理者を選任しなければならない。
貨物自動車運送事業法 第16条第3項
安全管理規程に定める内容は次の通りとなります。
一 輸送の安全を確保するための事業の運営の方針に関する次に掲げる事項
貨物自動車運送事業輸送安全規則 第2条の5
イ 基本的な方針に関する事項
ロ 関係法令及び安全管理規程その他の輸送の安全の確保のための定めの遵守に関する事項
ハ 取組に関する事項
二 輸送の安全を確保するための事業の実施及びその管理の体制に関する次に掲げる事項
イ 組織体制に関する事項
ロ 経営の責任者の輸送の安全の確保に係る責務に関する事項
ハ 安全統括管理者の責務及び権限に関する事項
三 輸送の安全を確保するための事業の実施及びその管理の方法に関する次に掲げる事項
イ 情報の伝達及び共有に関する事項
ロ 事故、災害等の防止対策の検討及び実施に関する事項
ハ 事故、災害等が発生した場合の対応に関する事項
ニ 教育及び研修に関する事項
ホ 内部監査その他の事業の実施及びその管理の状況の確認に関する事項
ヘ 輸送の安全に係る文書の整備及び管理に関する事項
ト 事業の実施及びその管理の改善に関する事項
四 安全統括管理者の選任及び解任に関する事項
運行管理規程について
一般貨物自動車運送事業者等は運行管理者が運行管理者の業務を処理するための必要な職務及び権限などを運行管理規程に定めなければなりません。運行管理規程は定めるだけでよく届出などの義務はありません。
一般貨物自動車運送事業者等は、運行管理者の職務及び権限、統括運行管理者を選任しなければならない営業所にあってはその職務及び権限並びに事業用自動車の運行の安全の確保に関する業務の処理基準に関する規程(以下「運行管理規程」という。)を定めなければならない。
貨物自動車運送事業輸送安全規則 第21条
2 前項の運行管理規程に定める運行管理者の権限は、少なくとも前条に規定する業務を処理するに足りるものでなければならない。
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